テーパースロットアンテナ

技術部

テーパースロットアンテナとは?初めに,特徴と用途をまとめる.
 

1)特徴

進行波アンテナの一種である.
・主にマイクロ波帯(300 MHz~30 GHz)で使用される.
・インピーダンス特性が非常に広帯域である.(例えば,比帯域が1:10を超える超広帯域を実現できる.)
単一方向に指向性を有しており,最大で中程度(約10 dBi)の利得が得られる.
・基本構成はシンプルであり,両面プリント基板(PCB)1枚と基板用高周波コネクタ1個で製作することが出来る.
 

2)主な用途

上記の超広帯域な周波数特性を利用して以下の用途で用いられる.
・測定用のアンテナ
・地中レーダーや航空機レーダーなど各種レーダー用アンテナ
・セキュリティ検査や非破壊検査などイメージング用アンテナ
 

1. テーパースロットアンテナの電気特性

図1.1 テーパースロットアンテナ

 
次に最も一般的なテーパースロットアンテナ構成について電磁界シミュレータEMPro(KEYSIGHT, https://www.keysight.com/jp/ja/products/software/pathwave-design-software/pathwave-em-design-software.html)での解析例を用いて上記特徴等を具体的に説明する.図1.1は1枚の両面プリント基板で構成したテーパースロットアンテナである.高周波基板:RogersのRO4003C(比誘電率εr=3.38, 正弦正接 tanδ=0.027)厚さ:誘電体厚0.508 mm, 銅厚18 µm,を選択した.解析周波数0.5~10 GHzとし1 GHz~10 GHzの範囲でインピーダンス整合が取れること(VSWR<2 , VSWR (Voltage Standing Wave Ratio):電圧定在波比)を目標にする.基板の大きさは150×200 mmに設定する.図中の黄色で示した部分は銅箔であり,緑は誘電体を示している.なお,説明の便宜上透過させ裏面の銅箔パターンも表示させる.基板端の給電点からマイクロストリップライン(ラインは裏面)を介してスロットラインに電磁結合される(実際は高周波コネクタより給電される.図2.2参照).給電された波はテーパー状のスロット端部に沿って伝搬していき端部から空中に放射される(図1.3参照).狭いスロットラインの低い特性インピーダンスからテーパー状に徐々に広げることにより空間インピーダンス(120π≒377Ω)に変換している.テーパーの関数はいろいろ用いられているが,最も一般的なものが指数関数である.この指数関数を用いたアンテナをビバルディ(Vivaldi)アンテナとも呼ぶ.一方,放射方向(x軸方向)とは反対の後方に伝搬しないようにスロットライン端部の電磁結合部分の隣にキャビティ終端(オープンスロット)を配置する.図1.1では最も一般的な形の円形としたが,三角https://ss023804.stars.ne.jp/OpenFDTD/chap7_14.htmやハート形(図3参照)や楕円などでも同様の効果が得られる.図1.1に示す様にマイクロストリップラインはスリットラインに直交し電磁結合し,マイクロストリップラインの先端にはラジアル(扇)形のオープンスタブを付加しインピーダンス整合を取っている.ただし、1 GHz未満の比較的低い周波数ではセミフレキ(セミリジッド)ケーブルから直接スロットラインにハンダ付けすることもある(図3参照).
 マイクロストリップラインを50Ωとするとライン幅は約1.1 mmとなる.一方,図の様にインピーダンス変換をせずにスリットラインに結合させた場合,スリット幅はかなり細く0.1 mmとなる.
 

図1.2 反射特性

図1.2に各種パラメータを最適化した後の反射特性を示す.目標の周波数1.0~10.0 GHzでVSWR<2以下が達成され,この時比帯域が1:10となる.
 

図1.3 電界分布(5GHz)

図1.3に周波数5G Hzにおける基板上の電界分布を示す.位相(時間)変化させて観察すると波が給電点からマイクロストリップラインを介しテーパースロットへと伝搬し放射していく様子が観察できる(進行波アンテナであることが確認できる).次に,5 GHzにおける放射パターンを示す.
 

図1.4 放射パターン(5 GHz)

図1.4にE面(基板面),H面(基板に直交する面)の2面の放射パターンを示す.x軸方向に放射されていること(単一方向に指向性)が確認できる.また,主偏波(Eφ成分:y軸方向)に対し交差偏波(Eθ成分:z軸方向)は -30 dB未満に抑えられている.
 

図1.5 利得特性

図1.5に利得の周波数特性を示す.利得は低い周波数から5 GHz付近まで徐々上昇し行く.最大で11.7 dBiの利得が得られる.
 

2. 対せき形(antipodal)ビバルディアンテナ

テーパースロットアンテナでもう一つ代表的なアンテナ構成は対せき形ビバルディアンテナ(Antipodal Vivaldi Antenna)である.上記と同様に1枚の両面プリント基板と高周波コネクタで構成される.
 

図2.1 対せき形ビバルディアンテナ

図2.1は電磁界解析に用いたアンテナ構造(解析モデル)を示す.明るい黄色で示されている部分が表面の銅箔,暗い黄色で示されているのが裏面の銅箔を示している.マイクロストリップラインに給電されテーパーバラン(Balun: balanced-to-unbalanced transformer)により不平衡から平衡に変換され指数関数でテーパー状に広げられた素子から放射される.スリットを付加することにより低い周波数帯における開口部からの廻り込みを抑圧しインピーダンス特性を改善する.シミュレーションにより最適化した構造を実際に試作した.
 

図2.2 試作アンテナ(表面)

図2.2は試作アンテナ(表面)である.給電には基板用の高周波コネクタ(ワカ製作所,SMA/J, 01K2088)を用いた.ここで基板にある12個の小さな穴は固定用のものである.表面処理としてフラッシュ金めっきを施している.なお,詳細な説明は割愛します.
 

3. 試作例

図3. 製作例

図3にテーパースロットアンテナの試作例を示す.この試作では透明フィルムに型で打ち抜きした糊付き銅板を張り付けている.セミフレキケーブル(SXL-22)の片端に高周波コネクタ(SMA/J, 01K0781-20)をアセンブリし,もう片側の中心導体をスリットの上側に,外導体を下側にハンダ付けしている.キャビティ終端の形状はハート形にとしている.なお,ワカ製作所では試作のみを行った.
 
 

4. まとめ

以上,ここではテーパースロットアンテナについてシミュレーションや試作の例を挙げ説明した.アンテナの特性の詳細およびアンテナ設計・試作の依頼は別途お問い合わせください.

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