WSCを活用した手軽な非常用電源の作り方 その2

企画開発課 等々力修司

前回、当社「ソーラー充電モジュールWSC10008」を使った簡単な非常用電源の製作方法を紹介しましたが、今回はその続きになります。
 
前回では電池容量とDC-ACインバーター定格が決まりましたが、ソーラーパネルのサイズが決まっていませんでした。
今回はソーラーパネルのサイズを決めて全ての材料をそろえたいと思います。
 
 

まず、ソーラーパネルと言っても目的別に様々なサイズや出力があります。
例えば住宅用・ソーラー発電所用で使われている一枚300[W]以上の大きなパネル、街路灯や看板照明などに使われる数[W]~150[W]程度のパネル、電卓や腕時計に使われる[μW]~[mW]のとても小さいパネルなど、原理は同じなのですが用途に応じて様々な特性があります。
 
今回は「ソーラー充電モジュールWSC10008」を使いますので、150[W]以下の中から選定します。
 
最初にソーラーパネルの出力電圧を確認します。「ソーラー充電モジュールWSC10008」は
入力電圧が18~28[V]となっていますので、ソーラーパネルの仕様を確認して「解放電圧 又はVoc」がこの範囲に入っているものを選択します。
 
次にサイズを決めていきます。
まずは必要な最大電力を計算してみましょう。
前回、電池容量を50[Ah]と決めました。これは50[A]を1時間放電できる容量です。
電池容量がゼロの状態から100%の充電にかかる時間を見積もってみます。
ソーラー充電モジュールWSC10008」の最大出力電流は8[A]です。
50[Ah]電池の充電時間は最速で 50[Ah] / 8[A] = 6.25[h] となります。
日照時間の平均は夏至で14時間50分、冬至で9時間45分程度です。
一見1日で充電が終わる計算ですが、実際はそう上手くいきません。朝夕の日照が弱い時間やソーラーパネルに当たる季節変化による日光の角度が発電量に影響するからです。
したがって、50[Ah]の電池を一日で充電したいと考える場合は「ソーラー充電モジュールWSC10008」の最大電流を供給できるソーラーパネルを選定することになります。
(最大電流を供給しても一日で満充電できるのかは天気次第です)
 
ソーラーパネルの出力は 「出力電圧 x 出力電流x1/変換効率」で概算できるので
12.8[V] x 8[A] x (1/ 0.9) = 114[W]
となり、120[W]以上が望ましい計算結果になりました。
 
120[W]のソーラーパネルは1辺が大体90cm前後くらいの大きさになります。
ソーラーパネルはサイズ≒出力電力の関係になっています。もちろん出力電力が大きい方が電池に早く充電ができますが、サイズが大き過ぎても設置に困る事もあります。
この大きさで設置できるかどうか、実際の設置場所を確認しましょう。
設置架台は単管パイプで組み立てるのが、コストや入手性の良さでオススメです。
 
パネルが大きすぎて設置が難しい場合はソーラーパネルのサイズを小さくすることを検討します。これは最短充電時間とのトレードオフになります。
 
ここで一度ソーラーパネルのサイズを選定するポイントを整理してみます。
 ・最短充電時間は何時間か?
 ・ソーラーパネルのサイズは設置可能か?
 ・予算範囲か?
上記OKであれば計算から出したソーラーパネルを選択します。(120[W])
NGであれば、ソーラーパネルを小さくして以下を確認します。
 ・ソーラーパネルを小さくした場合、最短充電時間が長くなるがOKか?
 ・容量ゼロから100%を1日で充電する必要があるか?
 ・容量ゼロになるような使い方をするか?
つまり妥協点を探すことになります。
 
妥協は良くないと思われるかもしれませんが、そもそもソーラーをはじめ自然エネルギーをつかって発電(充電)する事は安定性に欠けます。常に計算通りの発電(充電)が出来るのかは分かりません。ある程度の大らかさも時には大切です。
もちろん発電量を厳密にシミュレーションできる方は前述の限りではありませんが。
重要なのはシステム全体で如何にバランス良く充放電が出来るかを考える(設計する)事です。
 
本コラムで書いてきた最終レシピを纏めます。
 
—「WSCを活用した手軽な非常用電源の作り方」のレシピ —
・充電モジュール WSC10008 1台
 ・ソーラーパネル 解放電圧が18-28[V] 120[W]※小さくする事も検討可
 ・リン酸鉄リチウムイオン電池12.8V 50[Ah] 1個
 ・DC-ACインバーター 300[W]
・配線ケーブル類
 
※これ以外にもソーラーパネルを設置する架台や、電池・インバーター・充電モジュールを納める防水BOXが必要となってきますが、これらはお使いになる環境(主に設置場所)によって最適解が違うので本コラムでは触れませんでした。
 
 
 
不安定なソーラーエネルギーですが、効率良く充電を行うためにMPPT制御を搭載した
ソーラー充電モジュールWSC10008」はきっとお役に立てると思います。
 
 

ソーラー充電モジュールWSC10008

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